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朝日歌壇

短歌時評 山崎聡子

歌壇俳壇面で月1回掲載している「短歌時評」。今月から歌人の山崎聡子さんが担当します。初回は、現代短歌新人賞を受賞した睦月(むつき)都さんのスピーチを取り上げ、名付けようのないものに言葉を与え、可視化する短歌の営みについて考えます。

 現代短歌新人賞を『Dance with the invisibles』で受賞した睦月(むつき)都のスピーチに胸を衝(つ)かれた。睦月は、トランプ政権発足によって米政府機関のホームページからLGBTQ+関連の情報が削除されたことに触れたうえで、「名前を奪われても彼らはそこにいる」と述べ、短歌を書くことは透明化されているもの、名前の付いていない曖昧(あいまい)なものに言葉を与え、可視化する行為だと語った。

 春の二階のダンスホールに集ひきて風をもてあますレズビアンたち

 手を振りて駅に別れれば明日にはまた透明の女に戻るわれらか

 「見えないものたちと踊る」…

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